まず結論から

スケールが桁違い。これだけ大きい話を、これだけの密度で描き続けられる作家が今の日本にいることが、正直奇跡だと思っている。

そして何より、自分はここ数年でこの作品を一番読み返している。一度読んだ話を最初から追い直して、それでもまた面白い。それがこの作品の強さだ。読み返すたびに新しい発見があって、一度目では気づかなかった伏線や表情の意味に気づかされる。

歴史マンガと聞いて敬遠する人がいるのはわかる。でもキングダムは歴史の勉強になるマンガではなく、人間ドラマとして読めるマンガだ。史実をベースにしながら、全員が血の通ったキャラクターとして動いている。

ストーリーについて

奴隷出身の少年・信が、中華最強の大将軍を目指す。そこに後の秦の始皇帝となる嬴政(えいせい)との出会いが重なる。中国の戦国時代、七つの国が覇を争う中で、信と政が中華統一という途方もない目標に向かって進んでいく。

一つひとつの戦の描き方が丁寧で、戦略・戦術の面白さがある。将軍同士のぶつかり合いだけでなく、一兵卒の視点も入ってくるので、戦場の広さと混乱が伝わってくる。何万人規模の戦を、マンガとして読ませる力がある。

個人的に一番好きなのは合従軍編だ。秦が他の六国から一斉に攻め込まれて、滅亡寸前まで追い込まれる展開。そのクライマックスのさいの戦いが熱すぎる。国の命運がこの城ひとつに懸かっていて、兵士だけでなく民までもが一丸となって押し返していく。ほぼ詰んだ状況からの反転攻勢が、何回読み返しても毎回熱くなる。マンガで「熱い」という感情をこれだけ純度高く呼び起こされる場面は、そう多くない。

70巻を超えてなお、話が緩んでいない。連載中の作品でこれを言えるのはすごいことだと思う。

キャラクターについて

信の成長曲線がとにかく丁寧だ。最初はただの熱量だけで動く少年が、経験と敗北を積み重ねながら本物の武将になっていく。その変化が説得力を持っているのは、途中の挫折がしっかり描かれているから。

敵将の描き方が特に印象に残っている。「こいつらには負けてほしくない」と思わせる敵が何人も出てくる。敵将それぞれに哲学があって、なぜその選択をするかの理屈がある。悪役として描かれていない。

政というキャラクターも複雑で面白い。王として国を背負いながら、人間としての葛藤がある。信との関係性が作品の背骨になっている。

個人的に羌瘣きょうかいが好きだ。蚩尤という暗殺一族の出身で、剣の腕は桁違い。でも戦場から離れたときに見せる表情や、信との距離感が妙に可愛い。つよくてかわいい。あのバランスが、熱い戦いの連続の中でちょうどいい呼吸になっている。

絵・演出について

合戦シーンの迫力は唯一無二だと思っている。1万人、5万人という規模の戦を、ページの中で表現できている。兵の動き、将軍の突撃、混乱の中の一騎打ち——それが全部紙の上に乗っている。

戦の全体図と局所の戦闘を行き来する構成も巧みで、読んでいて戦場全体の流れがつかめる。俯瞰のコマと一騎打ちのコマの切り替え方が特にうまく、戦の規模感を損なわずに個人の活躍を描ききっている。

気になった点

70巻以上あるという事実は正直に書いておく。追いつくのに時間がかかる。でも自分は一度読み始めたら止まらなかったので、長さが苦になった感覚はなかった。

連載ペースが遅い時期があるのも事実で、追っかけているとじれったく感じる場面はある。電子書籍でまとめ読みするのが一番ストレスが少ないかもしれない。

もう一つ正直に書いておくと、最初は登場人物の名前がぜんぜん覚えられなかった。なにしろ全部漢字で、録嗚未ろくおみ隆国りゅうこく……似たような風貌のおっさんが大量に出てくるので、頭がごちゃごちゃになってくる。自分も最初は「誰が誰だっけ」となりながら読んでいた。

でも何度も読むうちに、一人ひとりのキャラに魅力が宿ってきて、名前を覚える前に顔と個性のほうが先に刺さってくる。「名前がわからないから無理」で脱落するのはもったいない。最初は雰囲気で読み進めて大丈夫だ。そこを越えれば、確実に全員のことが好きになってくる。

Verdict
総評 — キングダムを読むべきか
こんな人におすすめ
  • スケールの大きい話が好きな人
  • 熱い男たちのドラマが好きな人
  • 戦略・戦術の面白さを楽しめる人
  • 長期作品をじっくり読みたい人
こんな人には向かないかも
  • 完結済みで一気読みしたい人
  • 歴史用語・人名が多い作品が苦手な人
何度でも

中華統一という途方もない目標に向かって進む男たちの話。信の成長、政の覚悟、敵将の矜持——それが全部詰まっている。自分はここ数年でこの作品を一番読み返していて、特に合従軍編・さいの戦いは何度読んでも毎回熱くなる。歴史マンガが苦手な人でも、人間ドラマとして十分に楽しめる。追いつくのに時間はかかるが、それ以上に読む価値がある。

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