まず結論から
念能力が出てきてからのハンターハンターは、正直別次元に面白い。能力バトルというジャンルにおいて、この作品が到達した地点はまだ誰も超えていないと思っている。
休載が多いという話は先にしておく。それが理由で読んでいない人がいるなら、それはもったいない。話の密度と面白さはその不満を超えてくる。少なくとも自分はそうだった。
ストーリーについて
ゴンがハンターになる旅から始まる。最初はシンプルな冒険マンガの顔をしているが、読み進めるうちにどんどん複雑で深みのある話に変わっていく。天空闘技場編でネン能力が登場したあたりから、完全に別の作品になる。
ヨークシン編は特に傑作だと思っている。クラピカとクモ(幻影旅団)の対立構造、同時進行で動く複数のキャラクター、そして伏線の張り方と回収——あれだけの話をマンガで描ける人間が何人いるだろうと思う。
個人的にはキメラアント編が一番好きだ。「賛否がある」とよく言われるが、自分の中には賛しかない。長い、難解という声があるのは知っているが、あれだけの思想を娯楽マンガに入れ込める作家は冨樫義博だけだし、読み終わるころには涙がちょちょぎれていた。あの読後感を味わえる作品はそう多くない。
キャラクターについて
ゴン、キルア、クラピカ、レオリオ。この4人の関係性が作品の軸にあるが、全員に背骨がある。特にキルアは、主人公ではないのに読んでいる間ずっと気になるキャラクターだ。彼の家族との関係、ゴンへの感情、暗殺者として育てられた過去——全部がひとつのキャラクターの中で矛盾せずに存在している。
幻影旅団の描き方も反則だと思っている。敵のはずなのに、全員に魅力がある。クロロの知性、ヒソカの異常性、パクノダやフェイタンの個性——ひとりひとりが立っている。
コムギという存在をキメラアント編で登場させたことには、今でも驚く。
ネン能力について
この作品で一番惹かれているのが、念能力の設計思想だ。強化、変化、放出、操作、具現化、特質という6系統があって、それぞれに相性と得意不得意がある——という構造も巧みだが、本当に面白いのはそこじゃない。
念能力は「自分と向き合って、自分の適性を理解して、自分だけの能力を定めていく」という構造になっている。与えられるのではなく、自分で設計する。その思慮深さに強く惹かれる。能力バトルのジャンルで、これだけ人間の内面と接続した能力設計をやっている作品を他に知らない。
さらに「制約と誓約」という概念がある。強い能力を使うには、それに見合ったリスクや縛りを自分に課す必要がある。この仕掛けによって、「なぜこの人物がこの能力を持っているか」がキャラクターの内面と直結する。クラピカの能力がその最たる例だ。
気になった点
休載については正直に書く。連載ペースが非常に不安定で、何年も更新がない時期がある。追いかけている人間にとって、これは精神的にしんどい。
ネームだけのようなページも後半には存在する。絵として完成していないコマがある。それでも内容で読ませてくるのだから恐ろしいが、気になる人は気になると思う。
あとは終わりがいつになるかわからない。完結を確認してから読みたい人には、今は薦めにくい状況が続いている。
- 能力バトルが好きな人
- キャラクターへの愛着が強くなる作品が好きな人
- 話の密度・複雑さを楽しめる人
- 連載ペースを気にせず既刊をまとめ読みできる人
- 完結してから読みたい人
- 安定した連載を追いかけたい人
- 絵のクオリティを重視する人
能力バトルの天井がどこにあるかを更新し続けてきた作品。ゴンとキルアの旅から始まり、ヨークシン、グリードアイランド、キメラアント——読み進めるたびに話のスケールと密度が変わっていく。念能力の「自分と向き合って能力を定める」という設計思想が本当に好きで、キメラアント編は自分にとって賛しかない。涙がちょちょぎれる読書体験だった。休載という問題は本物だが、それでも読んだことを後悔する人を自分は見たことがない。